〇テーマ: パーソナルAIとサービスマッチング
〜 生成ではなく検索が多くの人々に大きな価値をもたらす〜
○話題提供: 橋田 浩一さん(理化学研究所)
○概要:
人間の話を聞いてそのニーズを満たすサービスを仲介(選択+実行)してくれるパーソナルAI (PAI)は現在の技術で実現可能である。それによりサービスの利用が簡単になりデジタルデバイドも解消して個人が嬉しいだけでなく、サービスの利用が増えてサービス事業者の収益も増えるから、PAIは10年で普及すると考えられる。PAIはあらゆる仲介業務を自動化することにより、生成AIをはるかにしのぐGDPの30%の付加価値を生むだろう。PAIはサービスの選定にAI技術を用いるが、それはLLMによるテキストの生成などではなく埋め込み(embedding)に基づく検索であり、中小零細企業でも開発できる。大規模な生成AIを開発しているビッグテックに技術的優位性はない。
さまざまなサービスの仲介によってそれらのサービスの入出力データを利用者の手もとに集約できる。PAIがそのデータをフル活用すれば利用者に最高のサービスを提供できる可能性があるが、逆に最悪の損害をもたらすリスクもある。そのリスクを管理するため、それらのデータを実際に利用者の手もとに集約してAIシステムの管理運用にフル活用すべき旨をISO/IEC 24970において規定する予定である。これが欧州AI法の整合標準になり、欧州の利用者に提供される高リスクAIシステムに適用され、したがって世界中の高リスクAIシステムに適用されることになると期待される。
PAIの初期のユースケースは自治体や企業や学校におけるサービスマッチングや広報マッチングだろう。たとえば自治体と地域の事業者のサービスや商品のカタログや広報・広告を各住民のPAIが取得して個人端末の中でマッチングすることにより、パーソナルデータを他者に渡さずに各住民に合ったサービスや商品を選ぶことができる。この受け手側でのターゲティングが従来の広告を置き換えるだろう。さらにPAIアプリに決済の機能があれば、分散型のeコマースが可能になり、いずれはあらゆる仲介業務を担うことになるだろう。
○開催日時:2025年3月22日(土)講演時間 14:00〜15:30
Zoom入室可能時間※ 13:45〜15:30
※Zoom会場では講演前の15分は、Zoom接続確認のほか、参加者の方が自由に交流できる場として開放します。ぜひ気軽にご参加ください。
○開催場所:オンライン会場(Zoom)
○参加費:無料
※無料(事前予約制):みんなのケア情報学会の会員限定ですが、話題提供者のご招待があれば、会員外でも参加いただけます。参加申し込みサイト(方法)は会員向けに一斉配信メールにてお知らせいたします。
○講演者プロフィール: 橋田 浩一さん(理化学研究所)
東京大学理学部情報科学科卒業。1986年同大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。1986年電子技術総合研究所入所。1988年から1992年まで(財)新世代コンピュータ技術開発機構に出向。2001~2013年に産業技術総合研究所でサイバーアシスト研究センター長・情報技術研究部門長などを歴任、2013~2024年東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センター教授。2020年より理化学研究所革新知能統合研究センター社会における人工知能研究グループグループディレクター。専門は自然言語処理、人工知能、認知科学。最近の研究テーマはパーソナルAI。