第3回年次大会を開催しました

11月28日(土)・29日(日)の2日間、「第3回年次大会」をオンラインで開催しました。


テーマ:リモートでもごちゃまぜ 〜コロナ禍で気づいたことをオンラインで語り合おう〜
大会長:橋田浩一(東京大学)
実行委員長:田中克明(コクヨ)
大会ホームページ:https://cihcd.jp/2020/


今年はコロナ感染防止対策のため、Zoomを利用したオンラインでの開催となりましたが、多様な立場や専門家、当事者が参加し、様々な意見交換や交流があり、盛会のうちに終了することができました。

1日目の対談「データを使って幸せになろう~パーソナルデータで本人の懐に入る~」では、自分で管理しないといけないデータが膨大で煩雑になっている、そのパーソナルデータの管理をAIに任せて、本人とって必要な情報を提供してくれるパーソナルエージェントがいたら最高のサービスが受けられるのでは?、AIが人間を支配しないか?など橋田浩一さん(東京大学)より話題提供があり、そのあと沢井佳子さん(チャイルド・ラボ)と参加者を交えた対談では、本人の「懐に入る」ために最高のサービスを提供できるパーソナルエージェント(AI)をどう活用するか、認知症になっても幸せに暮らすには、また、行動変容や本人の学びや生活の支援に繋がるのでは、と話題が広がりました。

チュートリアル「AIの利活用による介護現場支援の最前線を体験」では、成瀬文博さん(株式会社エブリハ)より、デモ映像を使ってAIによる歩行解析ができるアプリ「ケアコチ」をご紹介いただいた後、皆さんとリフレッシュ体操で体を動かしました。結城崇さん(エクサウィザーズ)より、話すだけで介護記録が行えるシステム「Hanasuto」をご紹介いただき、参加者からも実際に利用したいとのコメントがたくさん寄せられました。

講演「ケアに関するエビデンスとナラティブのこれから」では、中山健夫さん(京都大学)より、エビデンスに基づく医療についてわかりやすく説明いただき、加藤忠相さん(あおいけあ)との対談では、体験談を交えながらお話しいただき、介護やケアの現場でのエビデンスの解釈や誤解について、エビデンスとナラティブは隣り合わせであることの理解が深まるセッションでした。

パネルディスカッション「勝手に政策提言」では、香取照幸さん(上智大学)、
眞鍋馨さん(厚生労働省)、髙瀬義昌さん(たかせクリニック)より、厚労省OB、現役の厚労省、医師というそれぞれの立場から認知症ケアの標準化、施策の変遷、ケアと薬の最適化などについてお話しいただき、新しいケアの形についての課題や、将来に期待することが示されました。このセッションだけはLIVEでしか聞けない貴重な対談となりました。

パネルディスカッション「『痛み』の生物・心理・社会モデル」では、痛みは脳で感じており、痛みと上手に付き合う方法を牛田享宏さん(愛知医科大学)より、痛みセンターの紹介、痛みの定義・種類・原因・治療法をわかりやすく説明いただきました。岡田太造さん(みんなの認知症情報学会)からは、心の葛藤と慢性的な痛みの関係性をミンスキー理論を用いてお話しいただき、青野修一さん(愛知医科大学)より、痛みの情報共有について情報の収集・管理の流れを説明いただきました。

ライトニングトーク「ごちゃまぜの効能」では、竹林洋一さん(理事長/静岡大学)と、唐澤剛さん(慶應義塾大学)より、当日のプログラムを振り返り、ごちゃまぜ感が満載であり、交流の後の価値を創り出すことの大切さを話して、ごちゃまぜ交流会へ繋ぎました。

交流会では、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使って、グループを何度か変えながら参加者同士が交流を楽しみ、多様な立場において色々な考え方、見方がある事を感じたごちゃまぜな交流会となりました。

2日目のセミナー「当事者視点を生かした「見立て塾」」では、上野秀樹さん(千葉大学医学部附属病院)より見立て塾の開発のきっかけ、ご自身の体験などをお話しいただき、事前映像を含めて見立て塾を体験できるセッションになりました。

当事者による対話「お金・買い物・キャッシュレス」では、認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ(DFJI)ご協力により反転学習を取り入れ、事前映像の当事者同士の対話を視聴したうえで、岡田誠さん進行のもと、当事者を交えたグループに分かれて、各自の感想・気づき・次の一歩について対話し共有しました。

パネルディスカッション「認知症×働く “参加”は介護のゴールか?」では、河本歩美さん(高齢者福祉施設西院)、坂口和也さん(ときわ会)、蓬莱谷修久さん(福井県民生活協同組合)、小川敬之さん(京都橘大学)より、1ヶ月間の近況報告の後、田中克明さん(コクヨ)の進行のもとグループに分かれて、「働く」について、参加する動機づけ・環境づくり・趣味を生かして楽しく働く取り組みなど、ディスカッションしました。他の事業所からヒントを得たり、それぞれが工夫していることを共有する機会にもなりました。

パネルディスカッション「介護記録分析で、日本の介護を変えられるのか」では、石川翔吾さん(静岡大学)より、アセスメントには情報が必要であり、良いケア・良い記録の定義が難しく、仕掛けづくりが必要、と話題提供いただきました。小林美亜さん(静岡大学)より、パーソナル情報の活用、ニーズ(目的)を満たすウォンツを掘り下げていくことの重要性、田中克明さん(コクヨ)より、介護記録は仕事中心となり本人に対する記録が少ない、アセスメント力が重要、とお話しいただきました。本人のナラティブなストーリーが記録の中に見えて、医学的なエビデンスが記録の中に構造化して入っていき、人とAIがうまく付き合うシステムの実現可能を考える場となりました。参加者からの質問や対話が多く、介護記録の関心の強さを実感しました。

まさに、大会テーマの「リモートでもごちゃまぜ」が実現でき、実行委員長の思惑通り各自にモヤモヤを残して次の課題を見出したところで、幕を閉じました。

当日の映像は、参加者限定に公開します。(一部除く)

【ご登壇者と演題】

大会ホームページのプログラムをご覧ください
https://cihcd.jp/2020/program-table/